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太陽と月の境目にできる薄明りの世界、夕闇。
片方は太陽へ、片方は月へと続く道を、僕たちは月に向かって歩いていた。夏の蒸し暑さを忘れてしまうほどの心地よい風が身体の隙間を抜けていく。道端に生えていた雑草のさわさわと揺れる音が、なんとなく鈴虫を想起させた。
「まさか君に会えるなんて思わなかったよ」
「僕もだよ、もう会えないと思ってた」
彼女と再会するのは、6年ぶりだった。
家が近所で親同士の仲もよかった僕たちは、一緒にいるのがあたりまえで、いつも二人で遊んでいた。家にこもるより、外で走り回るのが好きで、小さな公園で日が暮れるまで鬼ごっこしていたのを思い出す。だけど、彼女とはちゃんとした別れの挨拶もできないまま、離れ離れになってしまった。そのことは、今も後悔している。
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