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あのあとすぐ女の指示と超人的な肉体を駆使して半グレどもを叩きのめした。いかに凶暴で倫理観が薄いとは言え所詮はただの人間。赤子の手をひねるようなものだ。
ことを済ませた俺は女と共に【カルドロン】を出て適当な公園のベンチに身体を横たえる。目を閉じて深呼吸すると意識はすぐに交代した。
娘は俺が活動している間の記憶が一切無いようだった。
女は娘が貧血で倒れているところを通り掛かった薬剤師だと自己紹介と状況説明をした。念のため連絡先を交換する、という体裁で女と娘の間に面識が生れる。
今後もなにがあるかわからないので本人とも面識を持っておきたいというのが女の言い分だったが、それにしてもとんとん拍子に話が進む。不気味なほどに。
どうも手のひらの上に乗せられている気がして落ち着かなかった。善意ではあるのだろうが、人間ひとりを丸ごと薬にしてその娘に飲ませることになんのためらいも無い女をどこまで信用していいのかわからない。
まあ、いくら考えたところでもう死んでいる俺に出来ることはそう多くない。疑えるものは全て疑っておくくらいでちょうどいい。そう考える。
俺が娘を守るのだ……娘の人生が終わるその日まで。
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