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「息子の成績が伸びる薬はないでしょうか」
薬師院博士は目をぱちくりとさせた。
「はて、成績が伸びる薬ですか。そりゃまた何で」
「決まっています。不肖の息子の出来が悪いからです。いくら勉強させても成績が伸びない。高い金を払って家庭教師をつけたり塾に通わせたりしているのに。これでは中学受験に落ちてしまう。なのにこいつと来たらまるで危機感がない……ほら、お前のために来ているんだぞ。お前からもちゃんとお願いしろ、勉!」
黒沼は勉という少年のほうを向いて口角泡を飛ばしたが、勉は父からぷいっと顔を背けてしまった。
「こら、何だその態度は!まったく、お前はどうしてこう出来が悪いんだ。いいか、俺が子どもの頃はな……」
このまま薬師院博士そっちのけで説教が続きそうな気配に、薬師院博士は「まあまあ」と割って入った。
「夏休みだし、勉強ばかりでは滅入ってしまうのでは?少しくらい遊ばせたほうが、かえって勉強に身が入るでしょうに」
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