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慌てて立ち去ろうとする勉のズボンのポケットに、薬師院博士はこっそり小瓶を差し入れた。
「あんな叱られていてはやる気も出ないし、伸びるものも伸びないよ。あの日、実はお父さんのお茶にこの新薬を混ぜておいたのだ。効果が切れたらまた使いなさい」
「ど、どんな薬……?パパ、大丈夫なの?」
「なあに、問題ない。混ぜたのは、『人を褒めたくなる薬』さ。がんばる息子のことをほめて伸ばすようにね」
勉の顔が驚愕の二文字に染まる一方で、博士は自ら開発した新薬の効能に満面の笑みを浮かべた。
薬師院博士はもう一度勉に耳打ちをする。
世の人びとを明るい気持ちにする、希望の薬。
「パパに言ってやってくれ。やる気を引き出すための最高の薬は、褒めることだとな」
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