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夏と蝉と伯父さんと
人が夏の終わりを感じるのは、どんな時なのだろうか。
ネットで見たところ、やはり気温が涼しくなってくるとそう感じる人が多いらしい。あとは、スーパーで秋の果物なんかがお店に並ぶようになった時とか。甲子園の結晶が終わった時とか。とんぼを見かけた時に、そういう印象を抱く人もいるのだとかなんとか。
あとはまあ、宿題が終わってないと子供が騒ぎ始めた事も、わりと夏の終わりを象徴する風物詩なのかもしれない。
「自分はそのへんどうなん?ちゃんと宿題終わらせたんやろな?」
「……うっさいなあ」
そんな僕は現在小学五年生。これでも真面目に宿題は片付ける方だという自覚がある。算数ドリルはまだ残っているが、自由研究と読書感想文、漢字ドリルと絵日記はもうちゃんと終わらせている。――なんでお父さんやおじいちゃんが子供の時から夏休みの課題の内容は変わり映えしないのだろうか。よその学校では、夏休みの宿題そのものを出さない学校もあるらしいし、うちもそうすればいいのに。
「算数ドリルだけだよ、あとは。立派だろうが僕は」
「残ってるやないか。そら立派とは言えへんなあ。なんでお盆の前に終わらせんかったん?」
「サッカークラブの大会があって練習で忙しかったんだよ、仕方ねーじゃん!」
僕は思わず声を張り上げ、ぐちぐちと文句を言ってくる少年を振り返った。この、エセ関西弁っぽい喋り方をする少年。ここは僕の部屋だというのに、平然と中に入ってきている。
なお、僕の部屋は一戸建ての二階。ちゃんと鍵がかかるようになっているし、今もそうしているはずだった。それなのに、少年はあっさり部屋へと侵入を果たしている。それもそのはず。
彼の体は今、僕の目の前でふよふよ浮いている。
でもって向こう側が、うっすら透けている。
「もうお盆も終わったんだけど?」
僕はジト目で彼を睨んだ。
僕が夏の終わりを感じる最たるところは、お盆の終わり。お盆に何があるのか?決まっている。
「なんでまだ此処にいるわけ、伯父さん」
「ええやん別に。俺は暇なんやから」
「伯父さんは暇でも僕は暇じゃないんですけど!?」
死んだ人間がやってくること。
そう、目の前の――僕と同じくらいの年に見える麦藁帽子の少年は、僕の伯父さんなのだった。
お父さんが子供の頃小学生で死んでしまったので、今も小学生の姿なのだが。
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