夏と蝉と伯父さんと

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 なんで僕は自分の部屋で、さっきから律儀に幽霊にツッコミを入れているんだろうか。別に漫才師を目指しているわけでもないのに。  そして目の前の伯父が、“ええツッコミや”と感動して涙を流しているのがまたムカつくと言えばいいのか。 「大体、お盆の時期って曖昧らしいで」  ひらひらと手を振って孝行さんは言う。 「元は旧暦の七月。東京では七月十五日がお盆ってことになっとるそうな。でも、全国的には八月十五日ってことになっとるし……ようは、地方とか時代によってまちまちなんやて。つまり、いつ祖先の霊が来て交流するのかっちゅうのは、完全に生きてる人間の都合で勝手に決められたもんなんや。死んだ俺らが、律儀に守ってやる必要なんかあらへん。違うか?」 「なんか身も蓋もないな。……でもって、小学生で死んだくせにやけに詳しいな伯父さん」 「忍が寝てる間にパソコン借りて調べたんやで!ウィキにそれっぽいこと書いとった!」 「待って人が寝てる間に勝手に使ったの!?やめてくんない!?」  そもそも、伯父さんが死んだのはお父さんが小学生の頃だったわけで。そのころには当然、今と同じ形のパソコンなんてなかったはずなのである。何で使い方がわかったんだろうか、この人は。  いや、毎年のように我が家に来て、夏のたびに僕の周辺をうろちょろしていれば嫌でも知識は身に着くのかもしれないが。 「ええやん別に。俺だって“ねっとさーふぃん”とか、“すまほげーむ”とか“とれーでぃんぐかーどげーむ”とか、最近の子供達の遊びがしてみたいんやー!」  ぷっくー、と頬を膨らませる伯父さん。 「同時に、昔ながらの遊びもしたくてたまらん。せっかくの夏休みなんやで?せや、今から俺と一緒に外に遊びに行こう!夏の終わりを堪能しよう!」 「はあ!?何で僕が……」 「あと算数ドリルだけならなんとかなるやろ。ええやんええやん。あんなもん、いざとなったら答え丸写しにして提出すればええんやから!俺はいっつもそうしとっで!」  なんて駄目な大人だろう。甥っ子に普通、そんなこと教えるだろうか。  僕は呆れるまま、しぶしぶリュックサックを背負ったのだった。いや、彼は子供で死んだのだから、伯父さんといえど子供扱いしていいのかもしれないが。
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