服薬介助

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          ◯ 「明珍(みょうちん)さんこんにちはー。ひだまりです」  午後一時、私は「訪問介護ひだまり」の利用者である明珍次郎氏の家を訪問した。インターホンを鳴らしてから玄関のドアを開けると、おや、と思った。三和土(たたき)に見慣れない靴があったのだ。履き潰されたスニーカーは汚れており、靴底が剥がれかけている。よくこの状態で履いているなと思うレベルである。それが脱ぎ捨てられており、ものの見事に履き潰した靴底を見せている。明珍氏の革靴はいつも通り、端の方にきちんと寄せられている。  いつもならこちらが挨拶して入ると、明珍氏の「はーいどうぞー」というような声が聞こえてくるのだが、それがなかった。汚い靴を見ながら、心がざわざわするのを感じる。一体どんな人物が家に上がっているのだろうか。 「お邪魔しますー」  私は履き慣れた靴を脱いで揃えると、廊下を進んで行った。
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