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「一体何なんだ君は」
私が言うと、男は床から立ち上がろうとして立ち上がれず、食卓の椅子につかまりながら何とか立ち上がった。
「俺だよ、俺、オレオレ! オレオレオレ!!」
その顔をよく見た。見覚えがあるような気がしたが、私の記憶の中にこの男はいなかった。だが異常者であることはよくわかった。私は身を守るためにとにかく明珍氏の家から出なければならない。しかし残念ながら、家を出るためには男の後ろにあるドアから廊下に出て、玄関まで行かねばならない。もしくは私の背後の窓から出ることはできるが、年季の入った雨戸でしっかり閉ざされている。開けるまでに時間がかかり過ぎるのだ。最も現実的なのは廊下に出ることである。先程からずっとオレオレ言っている男をすり抜けてあのドアまで行けないものか、と考えてみるが一つだけしか方法が思いつかなかった。
男を伸して、倒れている間に外へ出る。それが現状、最善の策であるように思われた。
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