1人が本棚に入れています
本棚に追加
床に横たわる男の顔は醜悪に、奇妙に、まるでデフォルメでもしたかのように歪んでいた。嫌悪感と不快感が湧き起こるのを抑えられない。まるでゴキブリである。ただいるだけで不快。もし見つけてしまったら私はためらわずに殺す。増えても困るし、害のある菌を媒介されては大変だ。
ふと男の表情が変わった。不快なことに変わりはないが、その表情に見覚えがある。
「お前ん家、父ちゃんいないんだろ?」
ハッとする。
今まで忘れていた小学校の頃の同級生の顔だった。名前は覚えていないが、その憎たらしい顔を私の脳は覚えていたらしい。何故こんなときに、と男を見下ろす。そして私は混乱する。
男の顔は、その同級生の顔だった。小学生の頃のままの幼い表情で、床に転がっていた。男はどう見ても成人しているし、先ほどまでこんなに童顔——いや、童顔という域を越えているが、こんな顔ではなかったはずだ。まるで男の首を、私の同級生、しかも小学生の時のままの首とすっかりすげ替えたみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!