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時は流れ、家庭を持って子育てに追われるようになってしばらく。
未知のウイルスが猛威を奮い始めた。
感染した者は漏れなく外出を制限されるほどの威力を持つウイルスは、やがて我が家にも直撃した。
家にこもるだけの日々は、無気力に拍車をかける。
時間を知るため、暇を潰すため。テレビはつけっぱなしだ。
画面の向こうは、夏の甲子園。
テレビ観戦に興じる夫と子どもを横目に洗濯物を干している時、また記憶が意識をかすめた。
陽炎に揺れる後ろ姿。あの子は誰──。
家族が寝静まった頃、スマートフォンを手に取った。
その動きはすぐに止まる。
あの時、何年生だったか。
私は、それすらも忘れていたのだ。
しかし、いろいろと試すうちに問題は解決した。
これまで確かめようとしなかった記憶が紐解かれる。
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