16人が本棚に入れています
本棚に追加
あと少し、あとひと越え努力すれば。
もっと昇れるのに頑張らない。
お前らは、そういう人間の集まりだ。
入学早々、担任は皆の前でそう言った。
進学校だったから、“今後はこのままでは通用しない”ということを伝えたかったのかもしれない。
けれど私は焦りも感じず、ただただ納得したものである。
県内で“中の下”のレベルに位置する高校は、正に担任が言ったような人間が集まりそうな場所だった。
もっとレベルの高い高校に受かるのは、そこからさらに努力できる子たちだ。
取り敢えず部活に入って、青春の真似事をした。
学業において、さほど苦労せず上位にいられることは唯一の誇りだった。
ちっぽけなプライドを満たせるのは、ここが“中の下”だから。
上には上がいる。途方もないくらい。
躍起になって流行を追っていたのは、今思えば何も持たない自分を飾り立てるためだったかもしれない。
半年、一年。中身のない時間は風のように過ぎる。
進路なんて、どこか他人事だった二年生の夏休み。
膨大な量の宿題と休みの残り日数は、もうとっくに釣り合いが取れなくなっている。
片手間にテレビをつけたのは、そんな日だった。
最初のコメントを投稿しよう!