深夜の青竹城にて。

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深夜の青竹城にて。

 暗闇の中、スマートフォンの画面を点ける。時刻は二十三時三十分。城の跡地である公園に私は一人で立っていた。街灯の間隔は広く、そこかしこに深い闇が漂っている。霊魂の類も彷徨っていそうだが、暴漢が息を潜めていないかという恐怖の方が上だった。二十歳の女が一人で出歩くにはよろしくない。我ながら無防備が過ぎる。だけど、と目の前の天守閣を見上げる。それでも私はこの青竹城の伝説に縋りたかった。
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