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最終話:その後の俺たちは
「そうだ、お墓参り行こう~っと! トウヤさんも付き合ってね♡」
俺の嫁のミルルは、色々と悶着のあった俺の元カノの墓参りも毎年欠かさない。「もしかしたら自分たちのせいでリリが死んだかもしれないから」と、あの日の一件の事をずっと後悔しているんだそうだ。
「お腹の子供ももう安定期だしな。あいつの好きだったバラの花でも買って行くか」
俺だって少しくらいあいつに悪い事したかなって思っている。でも、あいつの我儘や女王様っぷりには耐えられなかった。
あれから五年経って、俺とミルルは籍を入れて子供も授かった。人気若手モデル同士の結婚って事もあって、マスコミにはけっこう騒がれたけど、不思議と、リリの事にはどこのメディアも触れなかった。
「あいつの人生って何だったんだろうな……」
あの日、リリのマネージャーが自殺したっていう話も聞いている。そのせいでメディアが俺とリリの過去について触れないのかと思ったら、事実は違っていた。
「そこまでリリさんのネームバリューは無かったって事ですよ」
俺の敏腕マネージャーがそう吐き捨てる。当時の俺たちはまだまだこの業界じゃひよっこで。話題にする価値すらなかったって事か。叩く以外のスクープではな。
せめて、あいつがあの世では素直で可愛らしい女になっているって、そう思いたい。まさか、日頃の行いが祟って地獄送りになんてなってないよな……?
「行くわよー! トウヤさーん!」
「おう。ちょっと待て~」
まぁいいか。あいつは過去の人間で、もうこの世にすらいない。
俺には、大切にしなきゃならない人間が沢山いるからな。生まれて来る子のためにも、ミルルのためにも、誰にも恥じない人生を歩んで行こう。
────了
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