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2.モデルの現場
「ちょっと! 今日のお弁当肉と炭水化物しかないじゃない! いつもの店でスムージー買って来て!」
全く。ここの現場のスタッフはどうかしているわ。何でモデルのお弁当が肉と炭水化物なのよ。そこは野菜中心にしなさいよ。だから、私はマネージャーに言いつけてスムージーを買いに行かせたの。
「あー、リリさんまたワガママです~? ミルルはお肉もお魚もバランスよく食べますよ~?」
間延びしたバカっぽい話し方をするこの女はミルル十八歳、後輩のモデルだ。何でも食べますアピールしているけど、私は知っているわよ、あんたが裏で吐き戻ししているって事。
「じゃぁ私のお弁当も食べる? 育ち盛りだものね。もっと食べて出すところは出さなきゃ♡」
まな板女に特大級の嫌みを込めて私は言い放つ。
「ミルル、成長期だからいくら食べても太れないんです~。リリさんは良いですねぇ、豊満な肉体をしてて♡」
「なっ……!!」
何よこのクソガキ。まさかの年齢マウント!? そりゃ私はもう二十一歳の年増よ。でも、まだまだ私にだって需要はあるのよ!?
「あ、リリさん。スムージー買ってきました!」
「遅いわよマネージャー!!」
イラつきに任せて私はそのスムージーをマネージャーに投げつけた。
「す、すいません。すぐに片しますから……」
汗だくのマネージャーはハンカチで周囲を拭きだした。ふん。そんなものじゃぶちまけた中身が全部拭けるわけないでしょう。バカな女。
そこに、モデル仲間のトウヤが手を振りながら近付いて来た。
「あはは。また派手にやってんなーリリ。今日はどの虫が居所悪いのかな?」
トウヤは私の腰に手を回して唇を耳に寄せると、ひっそりとこう囁いた。
「今夜俺の部屋に来いよ。二十時に待ってるぜ」
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