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4.天国と地獄
マネージャーが死んだ。
電車に飛び込んだそうだ。遺書には、私からのパワハラが辛くて死にたいと書いてあったそうだ。
警察からは、翌日の朝一に警察署で聴取を受けてほしい旨を伝えられた。
マスコミはこの騒ぎをすぐに聞きつけたらしく、マンションに帰ったら早速週刊誌の記者が数名待ち受けていた。
私は目の前が真っ暗になった。こんなスキャンダルに晒されたら私のモデル人生は終わりだ。せっかく名前が売れ始めて来ていたのに、ここで私の人生は終わるのだ。
「あ、そうだ、天国へ行こう」
今度は、幽体離脱をしての天国行きではない。本当に天国に行くのだ。今なら若くて美しいままだし、このままこの世で生きていても私に待っているのは茨の道だ。ならば、本当に天国に行ってしまった方が良い。
だから私は、部屋でそっと人生を終わりにした。
◆
◆◆
◆◆◆
目が覚めると、そこは黒い空に裸の岩山がごつごつとしている荒野が広がる、闇の中の様な場所だった。
「あ、あれ? いつもの天国じゃ、ない……?」
いつもの青空は? 花畑は? 湖は? 山々は? 美しい色彩は?
「ちょっと、ここどこよ……?」
私は辺りを見渡す。見渡す限り荒れた景色が広がっている。蝶々も鳥たちも居ない。ただ、遠くから悲鳴と低い唸り声は聞こえて来る。
「ま、まさか……!?」
「そのまさかじゃ」
その声は、黒い空から一筋刺した光から聞こえて来た。
「ここは地獄じゃ。お前は地獄に堕ちたのだ」
「はぁ!? 何で私が地獄に堕ちなきゃいけないのよ!」
「お前は、現世で傍若無人の限りを尽くした。そして一人の人間を死に追いやった。そんなお前に勉強をさせてやろうと魂となって天国に来させていたが、お前は何の勉強もしようとせず、ただ己の欲を満たすだけだった。そんなお前に天国に住まう資格は無い」
それだけ言うと、その声は聞こえなくなり光も消えて行った。
「ちょっと! ここから出しなさいよ! 私を天国へ連れて行きなさいよ!」
私の叫び声は、ただただ虚しくこの空間に響く。そして私の周りを地獄の猛者たちが取り囲んでいた。
──私はこれから、どうなるのだろう……。
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