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カウンター席に座りそわそわしながら陽が戻るのを待っていた。
店内を見渡すとほとんどがカップルや女性客ばかりのようだ。
(男同士でこういう店って来ていいのかな。陽は気にしてないみたいだけど)
テストも無事に終わったことだし、寄り道して帰ろうとの陽の提案で駅前の新しく出来たカフェに来ていた。
パンケーキが主のお店でいつも行列が出来ており前を通るたび気になってはいたものの、男だけではどうにも入りづらい雰囲気のお店だった。
「お待たせ」
陽がストロベリーとキャラメルのパンケーキを持って戻ってきた。
厚みのあるふわふわの生地にホイップクリームとフルーツ、その上からソースと粉砂糖がかかっている。
「これ俺のおごり」
「いいの?」
「悠めちゃくちゃテスト頑張ってたから。それに、そのおかげで俺も頑張れたし」
「ありがとう」
陽は隣の席に座るとストロベリーのパンケーキを俺の前に置いてくれた。
「悠、ずっとこの店来たがってただろ?」
「え?何でわかるの?」
口に出した覚えはないはずだ。
「通るたびにじっと見てたからさすがにわかるって」
そんな人から見てわかるほど凝視していたのかと思うと恥ずかしくなってきた。でも陽が自分のことをちゃんと見ていてくれて、行きたいところに連れて来てくれたことが何より嬉しかった。
「おいひい…」
一口、口にするとあまりのおいしさに恥ずかしさなどどこかに行ってしまった。次々に口へと運んでいく。隣の陽もおいしそうに食べている。
「人気なだけあってうまいな。悠のも一口もらっていい?」
「いいよ」
陽に自分のパンケーキを差し出す。
でも陽の手は動かない。
どうして食べないのだろう?と不思議に思い陽の顔を見た。
次の瞬間、陽の顔が不意に近づいたかと思うと口の横に何かしっとりしたものが触れた感触があった。
「んんんっ…!?」
陽の舌で口についたクリームを舐められたことに気づくまで数秒かかった。
顔がみるみる赤くなっていくのがわかる。
思わず周りに見られていなかったか辺りを見回す。
幸い見られてはいなかったようで胸を撫で下ろした。
「ちょっと陽、いきなり何!?」
すかさず抗議するも顔の火照りは治らない。
「だって悠、この前嫌じゃないって言ってたじゃん」
陽は頬杖をついて悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「そそそれは…そう言ったけど」
こんなところでしていいとは言ってない。
恥ずかしさをまぎらわすように残りのパンケーキを無理矢理口に詰め込んだ。
「悠、口ぱんぱんだけど」
「うるひゃい」
陽が隣でけらけらと笑った。
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