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ああ、わかった。
この人は陽と同じなんだ。
極端なところはあるけれど性別で人のことを判断しないし、されたくない。
だから聞いてて好感が持てるんだ。
「あっ、なんかごめん。僕ばっかりおしゃべりしちゃって」
ハッとしたように真紘が口に手を当てた。
「そんなことないよ。なんだか勇気をもらえた気がする」
オメガのほうがアルファより上とかさすがにそこまでは考えられないけど、オメガだって他の性と変わらない、対等なんだって思える気がした。
「本当!?ねえじゃあこれからさ木崎くんじゃなくて悠くんって呼んでもいい?」
「へ?」
真紘の突然の提案に変な声が出た。
「僕のことも真紘でいいからさ、ね?」
「う、うん。わかった」
小首を傾げてそんな可愛い顔で言われたら断れるはずがなかった。
陽以外に名前で呼び合う友人などいない。
恥ずかしさもあるけれど、そう言われて嫌ではなかった。
真紘と話せて本当に良かった。
オメガでも恥じることはないんだって。
アルファの、陽の隣にいたっていいんだって。
背中を押してもらえた気がする。
真紘の感情はきっと同じオメガだっていう仲間意識からくるものなんだろうけど人から好意を向けられることは純粋に嬉しいものだった。
「じゃあね、悠くん。また明日」
「うん。また明日」
真紘と別れていつも陽と一緒に帰る道を今日は一人で歩く。
(そうだ。陽に今日のこと報告しよう)
そう思い足を止めてスマホを取り出すとちょうど陽から通知があった。
ー今日の打ち合わせどうだった?ー
実行委員に決まった時、俺はこの世の終わりみたいなものすごい顔をしていたらしく陽は心配してくれていた。
ー緊張したけど大丈夫だったよ。あと1組の実行委員が篠原くんで仲良くなれたんだー
いつもなら既読になるとすぐに返信があるのに今日は返ってくるまでに少し間があった。
ー良かったじゃん。いろいろ話せた?ー
今度陽にも紹介する…と途中まで打って慌てて消した。二人は気が合いそうだと思うけれど真紘のあのアルファへの態度をみると会わせないほうが良さそうだ。
でも真紘と話してこんなに明るい気持ちになれたんだってことは陽に伝えたかった。
ああ早く陽に会いたいな。
ー明日詳しく話すよー
そう返すとはやる気持ちを抑えて家路を急いだ。
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