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※以下独自の設定がありますのでご注意下さい
検査結果が同封された封筒には別紙が入っていて、そこには再検査要の文字が記されていた。
この世界には男女の性とは別にα、β、Ωの第二の性が存在する。
アルファは全ての能力に優れており社会的にも優遇されているエリートでベータは最も人口の多い一般人だ。
そしてオメガはアルファやベータにはない発情期なるものが存在し、アルファを誘惑するフェロモンを発生させる。
全人口の中でオメガは最も割合が少ない。
その中でも男性のオメガは更に少なかった。
「精密検査の結果ですが、やはり悠さんの体には生殖器の発現はみられないようです」
無機質な診察室で医師が淡々と告げる。
両親とともに検査の結果を聞きに来ていた。
オメガになると本来の性別と関係なく妊娠可能な体となるのが一般的だった。
「人権保護のため対外的に公表はされていないのですが…国内でも数例、世界的にみてもかなり少数ではありますが、オメガ男性の中でごく稀にオメガとしての生殖機能を有さない方がいます」
神妙な面持ちで話す医師の言葉を聞いてショックを受ける両親とは反対にどこか人事のように話を聞いていた。
「私も実際に担当するのは悠さんが初めてですし研究途中の分野なので手探りにはなってしまいますが、これから一緒に向き合って行きましょう」
それから家路につくまでの記憶はあまり残っていない。
近年は抑制剤の急速な普及によりオメガの地位は向上しつつあったが、偏見は未だに根強く残っており、オメガ性の中でも希有な存在であることは自分と両親だけの秘密にすることにした。
自分のようなオメガにも発情は存在し、生殖機能が伴わないため他のオメガより症状がより強く現れるものもいるようだった。
子どもは作れないのに発情はするなんてただの獣じゃないか。いやそれ以下か…
社会的弱者であるオメガはアルファと結ばれて優秀な子孫を残せるからこそ存在意義があるようなものだった。
ちょうど悠の数ヶ月前に陽はアルファの判定を受けていた。少し照れながら結果を伝えてくれた姿が記憶に残っている。
俺は…オメガの自分はこのまま陽の隣にいてもいいのだろうか。
その日から重く黒い影にだんだんと蝕まれていく気がした。
しかし幸いなことにオメガになってから二年、十七歳になった今でも日常生活を脅かすような発情の症状は出ていない。
学校生活への影響を心配した両親からの提案で外ではオメガを隠しベータとして振る舞っている。
宣告を受けてから日常が著しく変わることはなかった。
アルファの判定を受けた陽もそれを鼻にかけることもなく変わらず隣にいてくれる。
「陽はさアルファの特進クラスには入らないの?」
「なんかアルファって実感がさ今でもないんだよな。それに悠と一緒の方が断然楽しいし」
白い歯をにっと見せて陽が笑った。
だからあの日まで俺は忘れていた。
自分が卑しいだだのΩであることをー
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