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「もしかして待っててくれたの?ちょうど今連絡しようと思ってたんだ」 陽は教室のドアを閉め中に入ると俺の前の席の椅子に向かい合うように座った。 「うん。悠、朝から話したそうだったし。俺も話聞きたかったから」 教室には陽と自分しか残っていない。 ようやく二人きりにになれて嬉しかった。 今ならオメガの話をしても大丈夫そうだ。 「それで昨日篠原と話してどうだった?」 「うん。真紘くん、すごくいい子でね。話しやすいし仕事も出来るしさすが頭がいいんだなって感じだったよ」 「へぇー良かったじゃん」 陽は机に頬杖をついて、いつものように笑って応えた。でも上手く言い表せないけれど何となく違和感を感じる。 「陽、何かあった?」 「ん?何もないよ。あ、悠ちょっと手貸して」 「え?こう?」 突然何なのだろう。 戸惑いつつも右手を陽の方へ差し出しす。 すると陽はシャツの袖のボタンに手をかけた。 「ちょっと何?」 陽は問いかけには答えずそのままボタンを外すとシャツを肘上くらいまでまくり上げた。 「何か腕についてる?」 先ほどから陽は伏目がちでよく顔が見えない。 何をしようとしているのか全くわからなかった。 「それで、オメガの話は出来た?」 またも陽はこちらの質問には答えない。 本当にどうしたのだろう。 陽の考えていることがよくわからなかった。 待っていても陽は話す気配がなさそうだったので仕方なく話を続けた。 「うん、それで真紘くんがっ…えっ?んんっ」 そこまで話すと突然、陽の唇が手首に触れた。 そのままちゅっと音を立てて強く吸われる。 鈍い痛みが走り思わず体がビクリと揺れた。 陽が口を離すと触れた所がほんのり赤くなっている。 触れられた所がじんわりと熱くなり、その熱が全身に広がっていくような気がした。 「気にしないで。話、そのまま続けて」 陽はまた場所を変えて赤い印をつけた。 気にしないでと言われても無理な話だった。 こんなことをされてまとまに話せるわけがない。 でも陽が止まる気配はない。 また今度は新たな場所に唇を落とした。 「そ、それで…んんっ」 声が出るのを抑えられず、空いている左手で口を押さえる。 「ちゅっ…ちゅっ」 だんだんと口づけが肘の方まで上がっていく。 陽が吸い付くたび、教室にその音だけが響いていた。 さっきまでは廊下から喧騒が聞こえてきていたのに、もう陽の唇から出る音しか感じ取れなくなっていく。 肌から与えられる感覚と耳から響く音に思考が働かなくなっていった。 「んんっ…」 体がよじれ快感に震えてとうとう話せなくなると、ようやく陽の唇がゆっくりと離れた。 すると陽は俺の手を握ったまま消え入りそうな声で言った。 「悠はさ、俺のことどう思ってる…?」 「え?」 それはもう好きに決まっているけれど、快感から解放されたばかりで状況が今ひとつ飲み込めない。 でも今はそういうことを聞かれている訳ではないとぼーっとした頭でも何となくわかった。 「俺、悠が思ってるほど出来た人間じゃないんだよ。悠が他のヤツに名前で呼ばれたり話したりするだけで嫉妬する…心が狭い人間なの」 ばつが悪そうに答えた陽の顔はよく見ると耳まで真っ赤になっていた。
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