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家に着くとそのまま玄関で倒れ込んだ。 這うようにしてリビングまで辿り着くと何とか冷房のスイッチを押した。 震える手でシャツのボタンとベルトをどうにか外し、リビングのソファによりかかる。 呼吸は早くなる一方で冷や汗も止まらない。 鞄から陽に借りたタオルを取り出して額の汗を拭く。タオルから陽の匂いが微かに香った。 ードクン その瞬間今まで感じたことのないほど心臓が音を立てて俺は意識を失った。 遠くから陽の声がする。 ゆっくりと目を開けると俺は陽に抱きかかえられていた。 「悠!おい悠!お前だいじょ…」 陽の声が、止まった。 息を呑むのが、わかる。 もう認めざるを得なかった。 「これ、発情(ヒート)か…」 陽が動揺した様子で呟く。 走ってきたのか陽の体から汗の匂いがする。 ドクンとまた心臓が大きく動いた。 「お前ベータのはずじゃ…」 「はぁっ…はぁっ…あーうぅ…」 陽の問いに答えることなど出来ず、ただだらしない涎を口の端から垂らしながらまるで(ケモノ)のような声を出すことしか出来ない。 知られたくなかった。 こんな醜い姿見られたくなかった。 陽の隣にいて恥ずかしくない自分でいたかった。 ぼんやりとした視界の中で発情(ヒート)の匂いにあてられた陽が見える。その姿にさえ欲情する自分に吐き気がした。 「はぁっ…みっ見ない…で」 何とか力を振り絞り陽の体から逃れようとしてそのまま床に倒れ込んだ。 「おい、悠!大丈夫か!?」 「さっ…触るなっ…」 手を振り払っても陽はまた俺を抱き寄せた。 どうしていつも君は俺の手を取ってくれるのだろう。見捨てないでいてくれるのだろう。 「陽っ…陽!」 消えそうな声で名前を呼びながら陽の首に手を回す。 「どこにも行かないで…俺を置いて行かないで…」 よだれと涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃだった。 「大丈夫だよ。俺はどこにも行かないよ」 そんな汚い俺を陽はまた抱きしめてくれた。 落ち着かせるように優しく何度も頭を撫でる。 ねぇ陽、ごめん。 いつも迷惑かけて、ごめん。 こんなΩ(ケモノ)になる前に伝えておけば良かった… どうしようもなく陽が好きだってー。 ゆっくりと陽と目が合う。 今まで見たことのない熱を帯びた表情にゾクリと快感が走った。 引き寄せられるように唇が近付いていく。 一度触れ、また見つめ合うと何かがプツリと切れたように貪るようなキスを何度も何度も繰り返した。 途中、陽の絡まった舌が一度離れたかと思うと何かが口内に押し込まれる感覚があった。 程なくして俺は意識を失った。
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