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「僕の家族は父と母と兄の4人家族なんだけど、僕以外は全員がアルファなんだ」 「…え?」 知らなかった。 ものすごいエリート一家ってことではないか。 驚かれる反応には慣れているのか真紘は淡々と続けた。 「だから家族も僕自身もアルファだろうって信じて疑わなかったんだけど結果はオメガだった。それから家族の自分を見る目が変わったんだ」 真紘の心情を思うと胸が痛んだ。 それが顔に出ていたのだろう急いで取り繕うように真紘は言った。 「家族仲は悪いわけではないから安心して。でもそれからアルファに負けたくなくて人一倍勉強したし、アルファの生態も調べ尽くしたんだ」 やっと納得がいった。 真紘の芯の強さはここからきていたのだろう。 「アルファにも色んなタイプがいるけど、どんな優秀なアルファでも共通しているのはオメガのフェロモンには逆らえないってこと。だからさっき悠くんは津崎くんが最後までしてこなかったのは自分に魅力がないからじゃないかって言ってたけど、それは違うと思う」 「じゃあそれって…」 「文化祭の時も津崎くんは悠くんを襲わなかったし、それを聞いた時、そんなアルファ本当にいるんだって真底驚いたんだ」 「オメガのフェロモンにあてられても、ラット状態でも悠くんを襲わなかったってことはよっぽど悠くんのことを大切に思ってるからだと思うよ」 「…え?」 心の中にかかっていた暗くて重いもやのようなものが晴れていく気がした。 「だから津崎くんみたいなアルファ、絶対に手離したらダメだよ」 真紘は右手の人差し指をビシッと俺の前に立てた。 「うん、わかった。それと…ありがとう」 「「ぷっ…ふふふふふ」」 そのポーズがあまりに決まっていて思わず二人で吹き出した。 カフェを出て駅までの道を真紘と並んで歩く。 「ねえ、真紘くん。どうして俺のこといつも気にかけてくれるの?」 前々から気になっていた疑問をぶつけてみた。 予想外の質問だったのか真紘は少し驚いているようで少し考えてから口を開いた。 「…それは悠くんが、昔の自分に、オメガの宣告をされて自信を失っていた頃の自分に似てたからかな。どこか放っておけなくて」 そんな真紘の姿は今からはとても想像できない。 「同じ性別同士の方が分かり合えるしさ、もし津崎くんと上手くいかなかったら僕のところにおいでよ」 「え?」 「…なーんてね!冗談。悠くんなら絶対に大丈夫だから頑張って!じゃあ僕先に行くね」 戸惑っている間に隣を歩いていたはずの真紘は駆け出していた。既に前方で小さくなっている。真紘はそのまま駅の改札を抜けるともう一度振り返って手を振った。 振り返した右手をそのまま下ろすとぎゅっと握りしめた。 やっと決心がついた。 ありのままの自分を、想いを、全部陽に伝えよう。 次の発情(ヒート)まではまだ時間がある。 でもこれ以上陽を傷つけたまま待たせるわけにはいかないし自分ももう待てなかった。 「父さん、母さん、ちょっといいかな?」 その日の夜、両親に自分の想いを打ち明けた。 正式に許可が出たあと、すぐに陽に連絡した。 『大事な話があるから今週末うちに来てもらってもいい?』 『わかった』 既読になってからすぐに陽から返信があった。
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