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「お、お邪魔します」 「何かしこまってんの?何回も来てるだろ?」 玄関でやや緊張しながら靴を脱ぐと陽に笑われた。 陽の言う通り小さい頃から何度も家には来ているしもちろん泊まったことだってある。 でもオメガになって陽への気持ちをはっきりと意識してから来るのは初めてだったので妙に緊張してしまう。 (次の発情期はまだまだ先だし…) オメガの発情期は三ヶ月に一回のペースで起きるのが一般的だ。初めての発情期からまだ一ヶ月程しかたっていない。さすがに今日起きることはないだろう。 やましい気持ちを振り払うようにぶんぶんと左右に頭を振って陽の後に続いた。 陽の家は一般的な一軒家で一階にリビングと浴室と洗面所、二階には陽の部屋がありその他にいくつかの部屋があった。 お互い高校生にもなると、さすがに陽の部屋では狭いのでリビングのテーブルで勉強することにした。 テーブルの横にはダイニングキッチンがあり、リビングの奥には大きな4人掛けのソファとその向かいにテレビが置いてある。 俺たちはテーブルに向かい合って座った。 陽が冷たい麦茶を出してくれたので落ち着かせるようにごくりと一口飲み込んだ。 「なあ、悠ここはどうやって解くの?」 「ここはこの公式を使って…」 「なるほどな。さすが悠だな」 「あとこの先生こういう類の問題好きだからこの辺りも出そうかも」 「へぇー。悠すご」 思いのほか陽が真面目に取り組んでいるので変な気を起こしていた自分が恥ずかしくなった。 時折り質問したりされたりして、また互いに集中してペンを動かす。 会話がなくとも陽と一緒にいるだけで本当に心地よかった。 相当な時間、二人で集中して机に向かっていたと思う。窓を見るとすっかり日が落ちて暗くなっていた。 夕食に宅配のピザを頼んで二人で相当な量を平らげた。キッチンで後片付けをしていると陽がソファでうとうととしているのが見えた。 「陽、もう寝る?」 「うーん…ちょっとだけ。悠、先に風呂入っていいよ」 「わかった」 そのまま眠りに落ちた陽に自分の制服のブレザーを掛けると俺は浴室に向かった。 浴室から出てバスタオルで体を拭く。 久しぶりに湯船に浸かったらかなり気持ちが良かった。 下着と陽から借りたスウェットのパンツを履いて髪を拭いていると足音が近づいてくるのがわかった。間も無くして洗面所の引き戸が開いた。 「悠、スマホずっと鳴ってる」 振動音で起きてしまったのだろう。陽はやや不機嫌そうに眠そうな目を擦っている。 きっと母さんからだろう思った。 そういえば陽の家に行くとは言ったが泊まるとは言っていなかった気がする。 「ごめん、ありがと」 そう言ってスマホを受け取ろうと右手を伸ばすと、その手を突然掴まれ引き寄せられた。 「よ、陽…?」 俺の肩に陽が顔をうずめる。 「どうしたの?俺まだ髪濡れてるから陽も濡れちゃうよ」 反応がない。 心なしか肩に乗る陽の額が熱い気がした。 (まさか…) 一瞬嫌な考えがよぎる。 だが体に異常はない。 陽が近くにいて鼓動は早くなってはいるが発情(ヒート)ではなさそうだ。あの独特の感覚は一度経験したら忘れられない。嫌でも覚えてしまった。 「陽、本当にどうしたの?俺発情(ヒート)はきてないと思うんだけど」 「…うん。悠は発情してない」 「え?」 心の中を見透かされたような陽の返答に驚く。 するとずっと肩にあった陽の顔が耳元に近づいてた。 「俺が悠に欲情してるだけ」 吐息混じりの熱っぽい声に耳から快感が走る。 心臓がドクンと跳ねた気がした。 思考が追いつかない。動揺で目が泳いだ。 「ひゃっ」 考えを整理する暇もなく、陽が耳を舐め上げた。思わず変な声が出て恥ずかしさから口をおさえる。 陽はスマホを洗面台の上に置くと、強く俺を抱きしめた。 しばらくしてお互いゆっくりと顔を合わせる。 見たことのない熱を帯びた陽の顔に体が震えた。 陽は俺の頬に手をあてると親指でゆっくりと唇をなぞった。その手がだんだんと首筋に移動していく。 濡れた髪から水がたれ首筋を伝った。 陽がその水滴を舌で舐め取っていく。 「…んんっ」 恥ずかしさと舌先から伝わるゾワゾワとする感覚にぎゅっと目を閉じた。 ちゅっと啄むようなキスと舌全体で下から上に舐め上げるようなキスを繰り返して、垂れてくる雫を陽が絶え間なくすくっていく。 「よっ、陽っ…」 とうとう快感に耐えられず腰が抜けその場に座り込んだ。陽は唇を体全体に移動させながらゆっくりと俺を押し倒していく。 (陽…本当にどうした…の?) 考えようとしても次々と与えられる快感に頭が痺れて何も考えられなくなっていく。 スマホの振動音と陽の愛撫の音がいやらしく響いた。
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