01番

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01番

 朝から細かいトラブル続きで、予約した病院でもどうにもうまくいかないことばかりだ。  身体の具合の悪い時に、機嫌の悪くするような事柄も重ねて起きるものか。  そんな調子の私も元から不機嫌なのは仕方ないのだが、それにしても今日の担当医師はハズレだった。  予約時間になっても私の番は回ってこず、一時間の上、中待合で座り待たされた。  通院には毎度、手持ちの文庫本で時間をやり過ごすのだが、今日選んで来た本はしくじったかもしれない。  美しく乾いた文章の中米の文学だが、そこはかとなく暴力と血の匂いも漂い、この日の体調がそれに引きずられ、僅かに刹那的な荒い気分が煽られて来た。  ようやく診察の順番が廻り、診察の部屋に入ったが、若い担当医師は腕はいいのかもしれないが態度が横柄だ。  その態度が鼻についてしまい、普段はやり過ごせたかもしれないのだがこちらの言葉遣いもやや険しくなった。  私も医者が普通の商売業とは違うのは分かってる、でも限度というものがあるだろう?
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