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親子
青年「あれ? おまえに用はない、とっとと出ていけ! ……って、怒鳴らないんだねぇ、冬一さん?」
父さん「……そんな気力はない。俺は……疲れた。見れば、わかるだろう……」
青年「…………ごめん。それはそうだね。……倒れた父さんを見つけたのは、秋華だ。オレじゃない」
父さん「…………ああ」
青年「……秋華は……おとうさんとちゃんとお話したい……と、前にオレへ言ってた。……彼女は父さんを大事に思ってる」
父さん「……ん? 秋華ちゃんとおまえは……この国に来たときから仲良しだったが……俺とは……直接的な関係はなかろうに……」
青年「生命を救ってもらった相手にその言い方は感心しないな。……秋華は父さんの気持ちをオレ以上に理解できる。……あたしと春人のお父さんは似ているのってね……」
父さん「…………おまえの意図がわからん。なにを言っとる? 秋華ちゃんが、なぜ……そう思う、言うんだ……?」
「…………」
春人、と名が判明した青年は黙った。
父さん「……!? はっ……ま、待てよ?! ……も、もしや……お、おまえ……と……秋華ちゃん……が……」
青年「……続きを言ってもいいよ、父さん。オレと父さんしか、この部屋にはいない。……見知らぬ者が聞き耳を立ててはいないから」
父さん「……つ……付き合っている、のか……? 恋人だとでも……?? おまえたち二人が……? し、信じられん……!? そうなのか? ……い、いったい、い、いつから……いつからのことだ? ぉ、おまえたちは性格が違いすぎるだろうに!?」
青年「一気にいろいろと言い過ぎだよ。……厳密にいうと、母さんが事故で亡くなったのは今から、13年前。……当時、オレは14歳だった。いま鳴いてるセミの声はオレも覚えてる。ここでは周期ごとに大発生するらしいじゃないか。……事故現場でも、この……セミの声はしてた。オレは母さんに守られて、助かった。でも……代わりに母さんは死んだ。……お互いが20歳を過ぎたときに、好きで好きでもう我慢できないよぉ……と、オレは秋華から告白されたんだよ。それから……まぁ、親友から恋人になっていって……関係が続いてる」
父さん「……。……ど……同棲しとるのか、おまえたちは?」
青年「同棲……というよりは……秋華がオレのところへいつも来るんだよ。そこで、オレがお料理つくったり、洗濯したり……」
父さん「……。……おまえが、手料理を秋華ちゃんに食べらせたり、彼女の衣服を洗濯したりしている、と……。おまえの部屋で、おまえと秋華ちゃんは共に寝てるのか?」
青年「その通り。前からだけどね。オレも秋華もくっついて寝ると、ぐっすり眠れてさ……オレの不眠症もすっかり治ったんだ」
父さん「…………」
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