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その日私は、いつものように駅へと向かっていた。
自転車を全速力で漕いでいると、額から顔に汗が流れてくる。
通り過ぎる公園の樹々からは、煩いくらいの蝉の鳴き声が響いていた。
駅近くの駐輪場へ着くと、私はいつもの場所に自転車を停めた。
ふと前を見ると、二メートル先の自転車のハンドルに、赤トンボがとまっていた。
群れからはぐれたのだろうか?
空を見上げると、真っ青な空に、夏の名残りを惜しむかのような、
モクモクとした入道雲が精一杯の主張を続けていた。
夏の終わりは、すぐそこまで来ている。
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