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瑰さまの在位中、国が乱れることもなく、隣国との争い事も起きず、天下泰平。焔の国は
隆盛を極めた。
五年後の春。瑰さまは約束通り春蕾さまに帝位を譲られ、もといた辺境の地、古州へと旅立った。
「父と淑妃は今頃どんな顔をしているだろうな」
瑰さまが思い出し笑いを浮かべた。
「人が悪いです」
「そうか?俺はちゃんと約束通り国を守った。後宮をなくし、財政を建て直した。あとは新しい帝の仕事だ」
水路を完成させ、新しいまちづくりをするため今年度の予算をすべてを投入した瑰さま。金庫には一銭も残っていない。
「国の財政はもともと赤字で、後宮に関わる予算が年々増していて、財政を圧迫していた。父は家臣たちの忠告には一切耳を貸さず側室と女官と官女をどんどん増やし贅沢三昧だ。仙洞御所に移っても華美な生活を変えようとはしなかった。このくらいでは腹の虫は収まらないが、俺には愛する妻と可愛い子どもたちがいる。あんな父のために無駄骨を折るのはもうごめんだ」
馬が複数頭で曳く馬車は御者が運転してくれる。天蓋も周囲に覆いもあり揺れもあまりなく乗り心地も快適で、僕たちの大切な子どもたちがすやすやと眠っていた。
二ヶ月後に四歳になる長男の飛龍と、一歳を迎えたばかりの長女の笙鈴。父親の瑰さまに二人ともよく似てる。寝相も寝顔もそっくりだ。
「明璉、古州に新しい国を作る。ついてきてくれるか?」
「もちろんです。産まれたときから瑰さまと僕は一心同体です。どこまでもついていきます」
「ありがとう明璉」
先代に母を殺された僕と瑰さまの復讐は、梓豪さまという強固な後ろ楯を得て、新たな国を建国すること。
これはまだはじまりに過ぎない。
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