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高価な調度品と華やかな装飾に彩られた迎賓の間。極彩色の龍と鳳凰が描かれた天井絵やカササギなどが描かれた壁画は圧巻の光景だ。
瑰さまのとなりにはお揃いの赤の婚礼衣装を着た花嫁が笑顔で座っていた。口元を扇子で隠していた。
気のせいかも知れないけど、睨まれているような、冷たい視線を感じた。
「明璉」
背の高い偉丈夫に声を掛けられた。
「久し振りだな」
「梓豪さま」
目の前にいたのは花嫁の兄で、瑰さまとは旧知の仲の隣国の皇子の梓豪さまだった。
「そんなに驚くこともあるまい。来賓として招かれたんだ。いて当然だろ?翠蘭はもともと龍恩に嫁ぐ予定だったんだ。瑰ほど真面目な男はないのに何が不満があるのか」
ため息をつきながら花嫁を横目で見る梓豪さま。様々な事情があるようだった。
酔ったふりをして妙に僕に絡んでくる梓豪さまから逃げつつ、厨房から酒や料理を運んでいるうちいつの間にか瑰さまは花嫁といなくなっていた。
跡取りを作るのが帝の大切な仕事。それは分かっている。分かっているけど……。
なぜか身が焦がれるように熱くなり、ぎゅっと上唇を噛み締めた。
夜が更けるまで祝宴は続いた。
尚宮さまも尚食さまもみな僕を目の敵にしている。だからいってこき使うことはないのに。片付けもほとんど一人でやらされて、精も根も尽きて疲れ果てて、眠気眼を擦りながら、泥のように重たい体を引きずりながら自室にやっとの思いで辿り着いた。
「もうダメ。疲れた」
ふらふらと倒れ込むように寝台へと横になった。硬いはずなのに、あれなんで柔らかい?しかも温かい?変には思ったけれど、猛烈に襲ってくる眠気には勝てずそのまま寝てしまった。
柔らかな朝の日差しに目を擦りながら目を覚ました。
「おはよう明璉」
爽やかな笑顔を浮かべ絶世の美丈夫が僕を覗き込んでいた。
「へ、陛下、な、なんで」
びっくりして一気に覚醒し慌てて飛び起きた。
「明璉、二人きりのときは瑰と呼べと言わなかったか?」
不満そうに唇を尖らせる瑰さま。
「枕が違うと寝れない。それは明璉、きみが一番よく知っていることだろ?」
瑰さまが僕の膝を枕代わりにごろんと横になった。
「やっぱりこっちの枕が一番落ち着く。お休み明璉」
「か、瑰さま」
慌てる僕にはお構い無し。よぼど眠かったのかすぐにすやすやと規則正しい寝息を立てて寝てしまった。
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