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瑰さまが部屋を出たあと寝台の下を覗き込んでいたら、
「もしかして探しているのはこれか?」
瑰さまの声がしてきて、ぎくっとして振り返ると、ずだ袋をゆらゆらと揺らす瑰さまが真顔で立っていたから心臓が止まるくらいびっくりした。
「俺から逃げるなど100年早い。明璉、これを着ろ」
「瑰さまこれは?」
華やかな女物の衣装を渡され一瞬固まった。
「見て分からないか?今からきみは俺の妻だ」
「男の妻なんてあり得ません。前代未聞です。大騒動になります」
「男であり半分は女だろ?俺の側から離れることは絶対に認めない。異界に行くことも絶対に認めない。去勢も絶対に認めない。梓豪にきみを絶対に渡さない。俺の妻になり、俺の子を産むんだ。これは帝の命令だ。拒否する権限はきみにはない」
何も言い返せないでいたら、
「この俺が知らないとでも思ったのか?僕の役目は終わったのだから。彼にはもう僕なんて必要ないのだから。とかどうせ馬鹿げたことを考えていたんだろ?きみには俺が必要でないかも知れないが俺はきみが必要なんだ。きみがいなくては困る。何も出来ない。魑魅魍魎が蠢く後宮……いや、伏魔殿で明日からどうやって生きろと言うんだ?」
やはり瑰さまは何でもお見通しだった。
「産まれたときから22年一緒にいるんだぞ。きみが何を考えているか手に取るように分かる。あと五年、辛抱してくれ。一緒に異界へ行こう。一人より二人のほうがいいだろ?きみは方向音痴なんだ。母君の魂に会えないまま異界で一生迷子ということも十分あり得るだろ?」
矢継ぎ早に痛いところをつかれぐうの音も出なかった。
お互いの裸は見慣れているとはいえやはり恥ずかしくて。後ろ向きで着替えをしていたら、いまさら恥ずかしがることもあるまい。明璉はやっぱり可愛いなと満足そうな瑰さまの声が聞こえてきた。
着替えを済ませ覚悟を決め振り返ると、
「明璉、おいで」
瑰さまが寝台に胡座をかいて座っていて、膝の上を指差して、満面の笑みを浮かべて手招きされた。
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