183.あげたの

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183.あげたの

「リディ。聞くが、キーファって奴が持ってる魔法剣、お前貸したの?」  ディックが、不意に学生を写すモニターを指差し、問いかける。  リディアは振り返り、頷く。画面には行程をこなす学生たちがいる。 「あげたの。役に立つと思って」 「は?」  ディックは思わずといった様子で立ち上がり、ディアンはマップを確認していた視線をちらりとリディアに向けた。 「あれ、やっちったの!?」 「うん」  リディアが言うと、ディックは絶句してそれから唸る。  ごめん、そういえばディックは魔法剣マニアだよね。  短剣は彼の好みじゃないけど、もしかしたら、欲しかった? 「じゃなくて。あれ、超レアアイテムじゃん。黄金期のってそうそうないぞ。お前の初任務で手に入れたもんだろ」 「そうだけど、私はもう十分命を助けてもらったから。きっと彼の命も助けてくれるんじゃないかなって」 「お前な――」  ディックは、これ見よがしに大きくため息をついて、それから頭を振る。 「私もそうやって助けられながら育てられたから。次に、繋いでいくものでしょ」  ディックはもう一度だけ大きく息をはいて、ディアンに目をやって、それから頷いた。 「私はここで育ててもらったからね。忘れてないよ」  ディックは、わずかに目元を緩ませて、ふって笑ってリディアの頭に手を伸ばした。  昔みたいに、髪をクシャクシャにはしなかった。    ただ頭にぽんと手が置かれる。 「お前の感謝は受け取った。でもなあ。リディ」  いきなり声に凄みが入る。
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