1.隠された地へ

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1.隠された地へ

   まだ闇が深い暁の頃。  暗闇に沈むように佇む生徒を確認し、リディアは頷いてついてくるように促す。  実習前の集合地点は、大学裏門前。細く開いた鉄門をくぐり、並木道を歩んでいくと、ゆるい下り坂になり開けた空間にたどり着く。  そこは、水が枯れた人工的な噴水跡地。周囲の石畳の隙間を埋め尽くすように雑草が生い茂る空間は、幻想的と言うよりも廃墟感満載で虫に刺されそう。  昼間でさえ生徒たちも近寄らないそこは、今夜リディアたちが近づくと、噴水の名残を見せる崩れた円形の石壁の中に、青白い光が浮かび上がる。    それは、直径五メートルほどの円陣だった。  時刻は午前四時、指定の時間ぴったりだ。 「転移陣よ、皆入って」  わずかに躊躇いを見せた生徒達だが、すぐに興味深々で発光する円の中に入っていく。それは、完全体とはいえない閉じていない円だった。  最後に足を踏み入れたリディアは、誓願詞を唱える。 “円を成せ、世界を繋げ。開かれた入口を閉ざし、新たなる出口に運べ”  魔力を注げば、光を成す線が繋がり完全な円になる。そして地面から背を覆い隠すような光のカーテンが下から上に昇る。    上昇するエレベーターに載ったときのような浮遊感に包まれると、直後に今度は下降するそれが地上に到着したときのような、軽い重みを身体に感じ、そして光が消えて視界が開ける。    そこは、鬱蒼と生い茂る森の中だった。
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