2.魔法師第一師団

1/1
前へ
/319ページ
次へ

2.魔法師第一師団

「ここが、魔法師団?」 「ええ。でもまだよ」  なにもない空間にリディアが手のひらを当て魔力を注ぐと認証され、目の前の景色が揺らぐ。生徒たちを一度振り返り、ついてくるように促し進むと、透明なフィルターを通るように僅かな抵抗を感じる。 「ここ――」  突如として、彼らの前には巨大な建造物がそびえ立っていた。 「え、え?」  彼らが後ろを振り返ると、先程の森が黒々と広がっているが、また目を戻すと重厚な石造りの外壁に囲まれた砦がある。  ここは、グレイスランド魔法師団の第一師団本部。  王国を守る一翼である要塞は、常に移動していて位置は秘されていて、王族にも知らされない。  団員たちはパスコードがあり、こちらへに来るルートを持っているが、リディアのように部外者は道を開けてもらうしかない。  それが、あの移動陣だ。申請すると直前に場所と時間が指定され、限定魔法陣が開かれ迎え入れられるのだ。    学生たちはもちろん魔法師団の存在は知っていたが、入るのは初めて。興味津々で浮足だっていたが、リディアを先頭に外壁の詰め所に寄ると、後ろからこわごわと伺う様子がある。    上を見上げると外壁には、第一師団の紋章の『竜を貫く大剣』――初代団長が竜を倒したことから、この意匠になったらしい、がはめ込まれている。  大剣を自身に照らすのはわかるが、このデザインでは|悪役(ヒール)だ。彼等の性質を表していると言える。竜のつぶらな瞳が、いたましげに叫びを上げているような口が悲壮感を誘う。    ていうか、魔法じゃなくて剣なの? とリディアはここを通るたびにいつも思う。
/319ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加