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4.魔法陣
リディアは外壁の小窓を叩き訪問を告げ、示された黒いパネルに手を当てて魔力派スキャンを受ける。するとブン重みのある音がして、今まで石壁だった場所が縦に長い長方形の形にポッカリ空いて、入口を成した。
リディアは全員揃っているのを確認しついてくるよう促す。その中は、十メートルにも及ぶ隧道のよう。途中、二重の落とし格子のある天上の高い空間を抜けて、ようやく外へでる。
冷ややかな夜気に肌が触れる、夜の匂いがする。
魔法灯の炎に似た明りがゆらぎ、歩哨が直立する中庭を通り抜ける。細い石廊下、数百年も前から王都を守る第一の砦だった建物は、補修はされていても、基本的に作りは直されていない。
「今通った入口で、あなた達の魔力波と生体データーがスキャンされて記録されたから」
リディアは振り返り告げる。困惑の視線に、実習前に同意書にサインしたでしょ、と念を押す。
「この中を通るすべての人間は、魔力波と生体データーを一生記録されるの。もしこの内部で何か問題を起こせば、即時に緊縛魔法が施行されるし、ここを出たあとに何らかの工作を施していたことがばれたら、世界の果てまでも追われるから」
王族のマーレンも従者のヤンも、個人情報を取られることと追われるという説明に微妙な顔だが、我慢してもらうしかない。
「何も問題を起こさなければ、何もしないわ。そしてあなた達の個人情報は一切外部に漏れないから」
この魔法師団の内部は治外法権。あらゆる王国でさえもちょっかいを出せない、どこよりも強力な王国なのだ。
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