9.ボディスーツ

1/1
前へ
/322ページ
次へ

9.ボディスーツ

「事前通告通り、今回は砂漠での実習です。ボディスーツ、強化素材ジャケット、防塵マスク、ゴーグル、耐魔仕様防護マント着用、一分で支度して」 「え」 「早く!」 「ここで、今?」 「そう、早く」  リディアは、一つ一つ指し示す。困惑の雰囲気の中、彼らから一歩引いて、硬い表情のままその場でスーツのジャケットを脱ぎ、白シャツのボタンを外し始める。 「え」 「は、おまっ!? お前っ」  流石に予想外の事態だったのか、生徒が慌てだす。 「ちょっと先生っ、待ってください!」 「お前、恥じらいないのか!?」  キーファの叫ぶような制止の声が響く。彼は礼儀正しく顔を逸していて、マーレンはリディアの腕を掴んでくる。ウィルは顔を引きつらせて同じく手を伸ばそうとしていた。  が、この二人の視線の先は、ボタンを外しかけたリディアの胸元。そこを凝視しながら制止してもね、と思うが別に煽ったわけでもない。  チャスはぽかんと見ているし、バーナビーはリディアと目が合うと笑う。 「下にはボディスーツを着ています。あなた達も早く着替えて!」 「え、ボディスーツ!?」 「早く!」  女性の更衣室は奥にあるけれど、行く暇なんてない。だいたい男性更衣室を通った先にあるって、セクハラじゃないのかと今は思う、あの頃は気づきもしなかったけれど。  スーツのファスナーを下ろすと、誰かがつばを飲み込む音がしたけれど、リディアは強気にその視線をはねのけてそれを脱ぐ。微妙な緊張は、すぐにため息に変わる。 「な、なんだよ、着てるじゃんか!」 「期待させやがって」 「なんの罰ゲームだよっ、これ!」
/322ページ

最初のコメントを投稿しよう!

57人が本棚に入れています
本棚に追加