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9.ボディスーツ
「事前通告通り、今回は砂漠での実習です。ボディスーツ、強化素材ジャケット、防塵マスク、ゴーグル、耐魔仕様防護マント着用、一分で支度して」
「え」
「早く!」
「ここで、今?」
「そう、早く」
リディアは、一つ一つ指し示す。困惑の雰囲気の中、彼らから一歩引いて、硬い表情のままその場でスーツのジャケットを脱ぎ、白シャツのボタンを外し始める。
「え」
「は、おまっ!? お前っ」
流石に予想外の事態だったのか、生徒が慌てだす。
「ちょっと先生っ、待ってください!」
「お前、恥じらいないのか!?」
キーファの叫ぶような制止の声が響く。彼は礼儀正しく顔を逸していて、マーレンはリディアの腕を掴んでくる。ウィルは顔を引きつらせて同じく手を伸ばそうとしていた。
が、この二人の視線の先は、ボタンを外しかけたリディアの胸元。そこを凝視しながら制止してもね、と思うが別に煽ったわけでもない。
チャスはぽかんと見ているし、バーナビーはリディアと目が合うと笑う。
「下にはボディスーツを着ています。あなた達も早く着替えて!」
「え、ボディスーツ!?」
「早く!」
女性の更衣室は奥にあるけれど、行く暇なんてない。だいたい男性更衣室を通った先にあるって、セクハラじゃないのかと今は思う、あの頃は気づきもしなかったけれど。
スーツのファスナーを下ろすと、誰かがつばを飲み込む音がしたけれど、リディアは強気にその視線をはねのけてそれを脱ぐ。微妙な緊張は、すぐにため息に変わる。
「な、なんだよ、着てるじゃんか!」
「期待させやがって」
「なんの罰ゲームだよっ、これ!」
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