夏の終り

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夏の終り

 あの夏の終りの年をあなたは覚えているだろうか?  30年前のあの最後の夏の終わりの年を。  僕が30歳のあの夏。あの夏は確かに終わりを告げた。  子供と過ごした夏休み。  夏祭りの綿飴。イカ焼き。フランクフルト。  勿論のかき氷。  舌を青く、赤く染めて皆で見せ合って笑った。  皆で甚平を着て暑いと文句を言った。  それでも、毎年のようにいつの間にか雨の続く日がやってきて、桜の葉は紅葉し、落ち葉をつもらせ、秋がやってきた。  暖冬だといいながら妙にあたたかい冬が過ぎ、春がくるかと思ったら急に暑くなり春の桜と夏の百日紅が一緒に咲いた。  それきり夏は終わらなくなった。  思えば30年前の最後の夏は異常なほど暑かった。  暑すぎて各地で森林火災が起き大勢の人が亡くなり、家をなくした。  台風が変な動きをして、予想外の災害の爪痕を残した。  蝉が異常に鳴いていた。  桜の葉は紅葉もしていないのに暑さに枯れて秋のように葉を落とした。  蚊ですら暑すぎてあまりいなかった。  地球温暖化と言われてから、決定的な何かを人間はしなかった。  思い出してみれば、最後の夏にはおかしな事ばかり起きていたのだ。  しかし、人間は季節は巡ってくれると想いこの夏が最後だと気づかなかった。  
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