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十年後──。
「さあ、今日もショータイムをはじめましょう! 笑うことは健やかな心と身体をつくる一番のおくすりですよぉ!」
笑母学園の校庭に、教師となった芽衣子の声が響きわたる。
「大きく口を開けてー! ワッハッハ!」
「ワッハッハ!」
「もっと大きな声で! ワッハッハー!」
「ワッハッハー!」
生徒たちは、なにを疑うこともなく大きな口を開け、大きな声で笑っている。校庭に植えられたケヤキが、子どもたちの笑い声を受け枝を揺らす。
あの夏の日。
一樹が言っていたことが本当であるかどうかは今もってわからないままだ。仮説は仮説のままに、今も芽衣子の心に強く残っている。
確かなことは、人間の放出するエネルギーを、植物がなんらかの形で自分たちの糧としているということだけ。
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