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約五分ほどの『笑時間』を終えると、制服に汗が滲んでいた。ひとつ難点を挙げるなら、このショータイムは季節を問わず校庭で行われることだろうか。猛暑日や極寒の日は拷問に近い。それでも笑っているうちに暑さも寒さも気にならなくなるのだから、やはり毎朝のコレは欠かせないものなのだろう。
「ったく、なんで外なんだよ。教室でやりゃあいいじゃん」
クラスメイトの園田一樹が汗を拭いながらぼやく。
「教室だと声が響かないからだめなんだって」
芽衣子とて、今まで何度だって思ってきたことだ。夏の茹だるような暑さの日も、雨の日も風の日も、粉雪が舞い踊る寒い日も、ショータイムは外。その疑問や不満を何度口にしたかわからない。
けれど、答えは単純。
笑い声を空気に振動させ響かせることに意味がある。エネルギーの放出が大事なのだ。
「てかさ、ガキの頃から思ってたけど変だと思わねえか?」
「なにが?」
校庭を抜け靴箱へと到着する頃には、芽衣子はもう汗びっしょりだった。早く教室に戻ってボディシートで汗を拭いたい。そんなことを思いながら内履きをすのこの上へと落とす。
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