15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「──なにそれ」
木と話すなんて馬鹿げている。一樹の見間違い、聞き間違いではないだろうか。
「ほんとなんだって。御神木にぺこぺこ頭さげてよ、ぶつぶつ話してたんだ」
「御神木だから、お祈りでもしてたんじゃない?」
「だーかーらー、それが変だって言ってんの! おれ、思うんだけどさ、外で笑うのって木に関係があるんじゃね? 笑い声を木に聞かせて……木がそれを栄養としてるとか」
教室についても一樹の妄想は止まらなかった。
せっかく笑うことで心をすっきりとさせたのに、一樹のせいで台無しだ。心に薄い靄が張り不安定に揺れている。
「一樹、掛け肥って知ってる? 植物って声をかけてあげると早く成長するらしいよ」
だから、先生たちが御神木に声をかけていたとしてもおかしくない。笑い声を聞かせているのだとしてもちっとも変じゃない。
そんな想いをこめて言ってみたのだが、一樹は頑として納得しなかった。
最初のコメントを投稿しよう!