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夏休みに入った。
「では、みなさん。ラジオ体操の前に大きな声で笑いましょう!」
ラジオ体操への参加は、夏休みの宿題のひとつでもある。町内にある笹原公園には、ポプラや桜がたくさん植えられており、緑あふれる自然豊かな公園だ。そこの広場に集まった町民が、町内会長の音頭に合わせ大きく口を開いている。
「さ、行きますよぉ! アッハッハ!」
「アッハッハ!」
「もっと大きな声で! アーッハッハー!」
「アーッハッハー!」
新鮮な空気を吸い込みながら、大きな口を開けて笑うのは気分がいい。心なしか、周囲の木々もうれしそうに笑っているようだった。笑い声が響き、それに合わせるかのように枝がわさわさと揺れる。
だが、無風だった。
相も変わらず今朝も暑い。太陽が周辺を隙間なく照らし、風など少しも吹いていない。芽衣子の髪一本揺れないのに、木の枝がわさわさと揺れるというのは一体どういうことか。暑さとは違う、変な汗が芽衣子の脇を伝う。
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