主人公は誰だ?

9/12

15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「それ本当の話?」 「本当。でさ、そう考えるとおれら人間も植物にとっては敵みてぇなもんだろ。木を切ったり、花を切って売ったりするんだから」  天敵を呼び寄せる。さっき一樹はそう言った。  だとすれば、人間の天敵は──。 「こっから先はおれの想像だけど、実はこの世界の主人公が人間じゃなくて植物だったら?」 「えっ」 「植物が生きるために人間が存在する。そして、人間の出すエネルギーがやつらの一番の栄養だったらどうよ? だから、おれたちは毎日おかしくもないのに笑わされ、そのエネルギーを吸い取られていて……大人たちはそれを知っているとしたら? この世界を牛耳っているのは人間じゃなく植物で、もっとエネルギーを寄越せ、さもなくば破滅させるぞって脅されてるとしたら?」  一樹の言葉がひたひたと心に浸透し、えもいわれぬ恐怖が込み上げてくる。すぐそばにある街路樹が聞き耳をたてているようで恐ろしい。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加