15人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
「さあ、みなさん! 今日も大きな声で笑いましょう! 笑うことが健康の一番のおくすりです!」
今朝も校庭に教師の声が響きわたる。
笑母学園の一日は大声で笑うことからはじまるのだ。
立っているだけでも汗が滲む猛暑の中、楠木芽衣子は教師の音頭に合わせて口を大きく開いた。
「さあ、いきますよ! ワッハッハ!」
「ワッハッハ!」
「まだまだ! ワッハッハー!」
「ワッハッハー!」
校庭に集められた全校生徒の声が青空に響きわたる。
不思議なもので、楽しくなくともワッハッハと声にだしているうち、本当に楽しくなってくるのだ。
一見するとおかしな光景かもしれない。けれど、これも教育の一貫であり、れっきとした健康法である。事実、幼稚園も小学校もエスカレーター式の笑母学園で過ごした芽衣子は、笑うことが心と身体の健康に直結していることを身をもって知っている。
笑えば心が軽くなり、胸のうちにあるもやもやなど吹き飛んでしまう。毎朝のこの笑いの時間は、まさにお金のかからないおくすりを摂取する時間であった。
最初のコメントを投稿しよう!