箕面の滝

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箕面の滝

 阪急宝塚線の支線である箕面線。終着駅の箕面駅。  ここは古来より修験者の信仰地であり、箕面大滝が有名だ。幼い頃から『箕面スパーガーデン』(今は大江戸温泉)では、よく家族や知り合いが集まって宴会をした。もちろんお風呂にも入った。小さかったので子供はまとめて男風呂。昭和あるある。  背中に綺麗な鯉の彫り物を持つおじさんに「わー めっちゃキレー 触っても良い?」などとチビッコ総勢7.8人でワラワラと纏わりついたり……おじさんは「カッコええやろ」といっぱい触らせてくれました。昭和あるある。    そういえば箕面には「天狗祭り」というお祭りもある。竹を細かく刻んだ「ささら」またの名を「じゃり」で子どもを叩いて邪気を払うというもの。叩かれると賢くなる、という説も。  夕方4時、太鼓の音とともにかなりリアルで怖い天狗のお面を付けたおじさんが、子どもを追いかけまわす。おじさん達は祭り開催前にかなり呑んでおり、中にはベロベロの天狗も。箕面出身の友達は「阿鼻叫喚のまつり」と当時の恐怖を語っていた。逃げ惑う子どもとじゃりを手にシバきまわす天狗。酔っ払っているため手加減を知らん天狗も居るのだとか。トラウマレベルの恐怖だそうな。子どもになって是非参加してみたい。  箕面の滝は観光地なので、滝道と呼ばれる滝までの道のりは綺麗に整備、舗装されている。ハイキングではなく、ウォーキングだ。  ちょっとだけワイルドなコースもあるが、それにしたってハイキング初心者バリバリの私でも物足りないぐらいの優しい道。ハイキングの方は「こもれびの森」というコースがあるのでそちらを歩く方が多いのではないだろうか。  今回私もそちらを歩こうと出掛けたが、生憎の雨で森は断念し、滝道の下道を歩いた。下道は「姫岩」という大きな岩の間を通り抜けることが出来る。仕事を辞めてから一度行ってみた時には、姫岩の中で茶色い蛇に遭遇。怖いというより、踏まなくて良かったーと安堵した。今回は小さいトカゲさんが出て来てくれた。爬虫類は比較的大丈夫な私だが、山に行って一番の恐怖は虫。虫は怖い。虫は苦手。空中に浮かんだミノムシの親戚みたいなものを引っ掛けたりしない様に細心の注意を払う。でも不思議と最近の山歩きで虫に遭遇する事は少ない。チョウチョは非常に良く見かけるのだが……私の後ろの方達が頑張ってくれているのかも知れない。あと、カラスも多い。行く先々でカラスに遭遇する。今まであんまり気にしていなかったが、最近やたらと気になるカラス。何故だろう。  箕面といえば昔は猿が有名だった。必ず猿に何かを取られる。小学校の遠足で箕面に行った時には、猿に石を投げられて同級生が怪我をした。私はその子の隣に居たのだが、その時私はネックレスタイプの御守りを指に引っ掛けて振り回しており、それが指から離れて飛んで行ったため追いかけてそこから離れた。その直後、同級生の悲鳴がして周りが大騒ぎになった。御守りって凄いと思いつつも、怪我をした同級生に対して何だか後ろめたい気持ちになったのを覚えている。  猿の被害が多くなり、餌付けを辞めたことから現在では昔の様に猿の姿を見る事はない。  お正月には車に飾った注連飾りのみかんを猿が全部持っていってしまうことが多々あった。たまにみかんが付いたままの注連飾りがあると、猿も食べないみかんなのか……と何故か取られていないことがちょっと恥ずかしくなる、というよく分からない現象が起こっていた。猿の居ない箕面の滝は何だかちょっと寂しい様な物足りない様な……人間って勝手だな……    滝のそばで持ってきたおにぎりを食べて、小雨の中そろそろ帰ろうと歩き出した。ハイキングは出来なかったが、雨が酷くなるかも知れないし、しゃーないなあと諦めて滝道で箕面駅に向かった。  途中には「唐人岩」という大きな岩があったり、滝から続く川の音が聞こえたりでそれなりに自然を感じられる。箕面は紅葉も有名だ。紅葉シーズンには観光客でいっぱいになる。でも紅葉していない青い紅葉も素敵なのだ。見上げた空に紅葉の星の様な形がキラキラ、チカチカして不思議な形を見せてくれる。  雨のお陰で刺す様な太陽光もなく、気持ちが良い。今日のところはこの位にしといたろう、と歩いていたのだが、見つけてしまった。池田の五月山までのハイキングコースへと繋がるトンネルを。    このトンネルが何というか趣きがあるというか、幻想的というか……物凄く想像力を掻き立てられる佇まいなのだ。短いトンネルなのだが異世界に繋がっているかの様な、通り抜けたら全く違う空間に辿り着くのではないか、と思わせる雰囲気を醸し出している。  突然光が差した。雨が上がって太陽が顔を出す。    これは。行っちゃえよ、ということですね!  もしかすると後ろの方達は「お前…またそんな無謀な…ふざけんな!」と口々に罵っていたかも知れないが、聞こえなーい 聞かなーい  また悪い性分がムクムクと現れる。  ルートも何も分からないまま、私は五月山に向かうトンネルに足を踏み入れた。  ここから本当の私のハイキングが始まる。  そして本日は筋肉痛のため、動く度に「あ、イタタタ」と呟いておる次第です。  宜しければ次回の「五月山ハイキング」にて私の無謀なチャレンジをお聞き下さい。聞こえへんけど。  追記 トンネルの写真を作品表紙にしてみました。下手くそで上手く写せてませんが💦
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