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「とても優しい人だね」
出逢った日、そう言って君は美しく微笑んだ。
「ありがとう」
そう言って私は歪な笑顔を返した。
「あなたに似合いそうだと思って、」
君はある日、口紅をプレゼントしてくれた。
「ありがとう、綺麗な色ね」
私はその口紅の色が好きになった。
君の選んでくれた色、私のために選んでくれた色。
「宝物にする」
「嬉しいなあ」
微笑む君は、やっぱり変わらずうつくしい。
罅割れて血の滲む唇じゃまともに笑えもしない。
こんなわたしじゃ駄目だ。
きみに相応しいわたしでいるためにも。
『最期の時まで、綺麗に飾らないと』
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