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始まり
暖かな陽射しが降り注ぎどこからか桜の花びらが舞い降りる、春の日。
高校生の愛音と大学生の兄の大知は2人で買い物へ出かけていた。2人は東京の八王子に住み、近くのショッピングモールへ行った帰り道、歩道を歩いていると乗用車が突っ込んで来た。
止まろうとしない車をすれすれの所で避けた拍子に転んでしまい、愛音はショックで気を失ってしまう。車は電信柱にぶつかり止まった。どうやら居眠り運転のようだ。
愛音と運転手はそれぞれ救急車で運ばれ、両親や末っ子の凛がかけつける。意識はまだ戻らない。
☆ ☆ ☆
「先生、愛音の状態はどうなんですか?」
母親が沈痛な面持ちで医者に尋ねる。
「検査の結果、特に問題は見当たりませんが、目を覚まさない原因が分かりません。様子を見ましょう」
父親は母の肩を慰めるように抱き寄せる。
「お姉ちゃん……」
「愛音……ごめん……」
兄は愛音に呟く。
愛音は夢を見ていた。何もない真っ白な空間。上下位は分かる。奇妙な場所だ。
「久しぶりじゃな」
2メートルほどの身長で、茶色の着物を着た白髪が肩まであり、一つに後ろで束ねている男性の老人が現れる。
「誰……ですか?」
「忘れているものは仕方がない。産まれる前に全ての記憶を消したのじゃからな。しかし、時は来た。全てを思い出し覚醒するのじゃ」
老人は空中にスクリーンを映す。見ると産まれる前の記憶がよみがえって来る。記憶の中へ入り込んで行く。
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