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「ちょっと気晴らしに散策しようかな?」
カモメのトフミは空き家になった海の家の屋根から飛び立つと、秋の海風を翼に浴びて周りを周回した。
「何なんだー?ビーチボールが浮いてるぞー。ちょっと遊ぼかな?
って、破けてるし。」
カモメのトフミは砂だらけの破けたビーチボール嘴で投げ捨てると、ため息をついた。
「何か面白いやつないかなあ?」
カモメのトフミはキョロキョロと当たりを見回して海岸を延々と歩いた。
他のカモメは、トフミしかいない。
「去年や一昨年は俺以外にもいっぱいカモメ仲間がこの時期に出逢ったのに、何で今年は1羽も出会さないんだ?」
空を見上げても、何も鳥が飛んでいる姿は無かった。
ただ青い空があるだけだった。
「寂しい・・・寂しい・・・」
破れたビーチボールが、海岸の向こうへ波に乗って流されていく。
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
ざざーーーーーん・・・
波の音が虚しく轟いて、カモメのトフミの寂しい心を更に締め付けた。
「寂しい・・・寂しい・・・寂しい・・・寂しい・・・」
その時だった。
ばさばさばさばさばさ・・・
「トフミ!!君はやっぱりセグロカモメのトフミじゃないか!!」
「あーーーっ!!君はーーー!!」
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