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自分が書いた目標が現実となる。かけっこの順位、テストの順位、大会での成績、様々なことがあった。どれも相手がいてその相手が不幸に見舞われることで願いがかなった。そして、それは必ず、相手の身近な人間の死だった。身近な人間の親戚、大事なペットなどが死んでいく。
自分が書いたことが現実になる。そして、その願いの代償に誰かの命が犠牲になる。
だとしても、僕はこの能力を使わない手はないと思った。相手が死んだとしても、どうやっても自分が犯人になることはない。僕が殺したという証拠がないからだ。僕の願いがかなったとして、悲しむのは僕のライバルたちだ。ライバルたちが悲しむことに僕が心を痛めることはない。今まで紙に書いた目標で僕の直接の知り合いが死んだことは一度もなかった。
中学校での高校入試でも僕は、自分の能力を使うことにした。どうしても行きたいというわけではなかったが、両親がうるさいので、第一志望の高校に行きたかった。高校などどこでもいいと僕は思う。とはいえ、進学の費用を出してくれるのは両親なので、両親の言うことに従うのは自然なことだ。
高校入試で犠牲になったのは、クラスの室長だった。僕の両親は僕を進学校と呼ばれる頭の良い学校に入れたがった。中学三年生のクラスでの室長は、僕と同じ志望校だったので、運が悪かった。そいつもまた、受験日の前日に自分の恋人が急に倒れたらしい。突然の心臓発作ですぐに死んでしまった。
ライバルを一人、蹴落としたことで合格者の枠が一人増えたというわけだ。そいつは普通に勉強していれば合格圏内だったのに。
『転校生が来て欲しいです。退屈な毎日を変えるような刺激的な奴がいいです』
無事、第一志望の高校に合格した僕は、勉強漬けの毎日に嫌気がさしていた。どうせ、僕が紙に行きたい大学名を書けば、その願いは必ずかなってしまう。それならば、勉強をそこまで必死にやる必要はない。
だからこそ、僕は退屈な毎日に刺激を求めた。高校一年生の4月の終わりに、日直が回ってきたとき、学級日誌のコメントに転校生が欲しいと記入した。
それはすぐに叶うことになる。
「転校生だ。席は真ん中の列の一番後ろが空いているな。そこに座ってくれ」
「ハイ」
GW明け、転校生はやってきた。僕は転校生の性別を記入しなかった。男でも女でも自分を楽しませてくれるのなら、どちらでも良かった。ただ、刺激的な奴だったら誰でもいい。そいつは確かに僕にとっては刺激的な奴だった。
ちょうど、名簿順で座っていた席で僕は、真ん中の列の一番後ろだった。そのさらに後ろに席を新たに設け、そこが転校生の席となった。転校生は自分の席に着くとき、僕の席の横で一瞬立ち止まった。そして、僕と目があった。その瞳の中には、怒りや憎悪と言った負の感情が読み取れた。
(これはおもしろくなりそうだ)
どう頑張っても、僕が転校生を呼び寄せたという証拠は見つからないだろう。それなのに、転校生は僕が悪いと言わんばかりの態度だった。
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