1章.転生

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1章.転生

「ん……」  心地よい風が頬に当たり、目が覚めた。  空腹感が大きい体を起こし、辺りを見回すと、だだっ広い草原にいた。しかし、なんだか見覚えのあるような……。  刹那。 「……『ウ゛ァーミリオン』は?」  先刻までプレイしていたウ゛ァーミリオンが見当たらないことに気がついた。まさか……壊した? 「のぉぉぉぅぁぁあっ!!私の生きがいぃぃっ!!!」  ……落ち着け、輝菜。消えたわけではないかも知れない。だって、ついさっきまで私、ゲームをプレイしていたのだ。そこから倒れて、意識が消えて…… 「ねぇ」  ん、なんだ?今、私は人生最速と言えるほどに頭をフル回転させて、ウ゛ァーミリオンが消えた理由を考えているのだ。変に話しかけないでくれないか。 「ねえってば」  私はずっとゲームのコントローラーを手に持っていた。しかし、今は手にない。というか、感覚がない。 ……まさか。  一つの仮説に行き着いた。冷や汗が背中を伝う。思い返せば、簡単なことだ。お医者さんは、栄養失調だと言っていたのに。しっかり、忠告していたのに。  私…私…………死んだ? 「どぅぁぁぁっっっ!死んだ!?」 「え!?びっくりした……大丈夫。君はまだ生きてるよ~」 「この私が!ぬぅぅ、なんたる不覚!」 「フカク?」 「死んでしまっては『ウ゛ァーミリオン』をプレイできない……それどころか、音ゲー、いや!そもそもゲームすらできないではないかっ!」 「え?え?え?君、何言ってるの?ウ゛ァーミリオンってこの国でしょ?」  ああ……ウ゛ァーミリオンをプレイできない……。RPGの最高傑作とでも言えるウ゛ァーミリオンをプレイできないとは。菰野原輝菜、人生最大の失敗である……。  って、 「は?」  ウ゛ァーミリオンはこの国?ちょっと待て。  顔を上げ、意識の外に追いやっていた声の主に問う。 「ウ゛ァーミリオン?ここが?」 「そうだよ?」  何いってるんだか、と、爆弾発言の主は言う。私は、もう一度周りを見回す。心の中で、どこかで見たことのある景色だと思っていたのはそのためか。 「あ、そうそう。君に聞きたいことがあったんだった」  声の主――ちなみに、綺麗な長い黒髪の少女だ――は、何かを思い出したように微笑み、言葉を疑う私を見下ろして言葉を放った。 「君、もしかしてだけど、フレイム家の人?」
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