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「私、雷うまく扱えないんだよね」
「……は?」
耳に届いた言葉が信じられず、思わず聞き返してしまった。
「だから、雷が扱えないんだったら!」
不貞腐れたようにジュピアが言う。そんな姿もかわいらしい。さすがは主人公……ではなく。
「おい待て。どういうことだジュピアよ」
主人公が魔法を使えない?そんな魔法ゲームがあってたまるか!
「どういうことって、そのまんまだよ。何度も練習してるのに、うまく魔法が使えない。雷は出てくるけど、弱々しくてすぐに消えちゃう」
「……それは、雷使いと名乗れなくないか?」
「雷は出せるから雷使いですー」
不機嫌そうに語尾を伸ばし答える。まあ、雷が出せるなら雷使いで間違いないのだろうが……。
「雷を出す以外に、なにか魔法はないのか」
雷を出す魔法は、ヴァーミリオン内でもだいぶ初めの方に覚える技だ。レベルとしては、1から3くらいのときだろう。この世界で「レベル」という概念があるかは知らないが、その魔法しか知らないのならばだいぶ低レベルだぞ。
期待を込めてジュピアを見つめる。
彼女が口を開く。
「え、そんなの知らないよ」
それはそれはまぶしい笑顔で答えた。私は地面に崩れ落ちる。
――これで決まった。
ジュピアは、もしかしなくとも、とても低いレベルである。キュティナと出会うイベントは、主人公がレベル3の時に起きたから、ジュピアのレベルは、少なくとも3以上だとわかる。その時に出合ったキュティナのレベルはというと……。
「レベル……1」
「え、なに、何の話?」
ジュピアはラメでもまぶしたかのような笑顔で聞く。いやしかし、この世界に「レベル」という概念がないかもしれない。
「ジュピア、聞きたいことがあるのだが……」
「なに?」
「ヴァーミリオンには、『レベル』という概念はあるのか?」
「キティー何言ってるの」
ジュピアが呆れたように言う。お、もしやレベルが無い?実力だけでどうにかできるものだろうか。そうしたら、ジュピアも私も、魔法を覚えて実力を底上げすれば、だいぶ強くなれる。
そんな私の淡い希望は、ジュピアの一言によって打ち砕かれた。
「あるにきまってるでしょ」
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