1章.転生

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「私、雷うまく扱えないんだよね」 「……は?」  耳に届いた言葉が信じられず、思わず聞き返してしまった。 「だから、雷が扱えないんだったら!」  不貞腐れたようにジュピアが言う。そんな姿もかわいらしい。さすがは主人公……ではなく。 「おい待て。どういうことだジュピアよ」  主人公が魔法を使えない?そんな魔法ゲームがあってたまるか! 「どういうことって、そのまんまだよ。何度も練習してるのに、うまく魔法が使えない。雷は出てくるけど、弱々しくてすぐに消えちゃう」 「……それは、雷使いと名乗れなくないか?」 「雷は出せるから雷使いですー」  不機嫌そうに語尾を伸ばし答える。まあ、雷が出せるなら雷使いで間違いないのだろうが……。 「雷を出す以外に、なにか魔法はないのか」  雷を出す魔法は、ヴァーミリオン内でもだいぶ初めの方に覚える技だ。レベルとしては、1から3くらいのときだろう。この世界で「レベル」という概念があるかは知らないが、その魔法しか知らないのならばだいぶ低レベルだぞ。  期待を込めてジュピアを見つめる。  彼女が口を開く。 「え、そんなの知らないよ」  それはそれはまぶしい笑顔で答えた。私は地面に崩れ落ちる。 ――これで決まった。  ジュピアは、もしかしなくとも、とても低いレベルである。キュティナと出会うイベントは、主人公がレベル3の時に起きたから、ジュピアのレベルは、少なくとも3以上だとわかる。その時に出合ったキュティナのレベルはというと……。 「レベル……1」 「え、なに、何の話?」  ジュピアはラメでもまぶしたかのような笑顔で聞く。いやしかし、この世界に「レベル」という概念がないかもしれない。 「ジュピア、聞きたいことがあるのだが……」 「なに?」 「ヴァーミリオンには、『レベル』という概念はあるのか?」 「キティー何言ってるの」  ジュピアが呆れたように言う。お、もしやレベルが無い?実力だけでどうにかできるものだろうか。そうしたら、ジュピアも私も、魔法を覚えて実力を底上げすれば、だいぶ強くなれる。  そんな私の淡い希望は、ジュピアの一言によって打ち砕かれた。 「あるにきまってるでしょ」
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