1章

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「試しにレベル、見てみたら?」  ジュピアに勧められ、ゲーム内でキャラたちが行っていたように、腕輪の紋章を上に向かってなぞってみる。  シュン、という機械的な音がすると、目の前に薄く緑に色づいたディスプレイが現れた。 「これは……」  ゲーム画面そのものだ。プレイするときにキャラのデータを見るページがあるのだが、それがそのまま目の前にあるという感じだ。  一通り目を通してみると、左上に「レベル」と題された部分があることに気が付いた。 「レベルはここから見るのか?」 「えっと……?」  ジュピアに尋ねると困ったような顔をした。何故。 「この画面の、左上のところに『レベル』と書かれた部分があるだろう?そこを押すのか?」  説明が足りなかったかと思い付け足してみると、ジュピアはまたもはて、と首をかしげた。 「ごめんキティー、説明不足だったね。その画面、本人以外見ることができないようになってるんだ。だから、画面のことを言われても、私見えなくて」 「なるほど、そうなのか」  プライバシーは確保されるということか。それはなかなかありがたい。 「とりあえず、気になったら開いてみるといいよ」  彼女のアドバイスに従い、恐る恐るその部分をタップしてみる。すると不思議なことに、感触がなかった。  映画のスクリーンのように映しているのだろうか。感覚がないことから物体として存在はしないのだろうから、空気にでも映しているのか?  さすがはファンタジーの世界だ。私には理解できない。  ピン、という軽やかな音と共に、パソコンのタブのように新しいディスプレイが現れた。  そこには、『キュティナ・フレイム Lv.1』という、なんとも無情な言葉が並んでいた。  私はそそくさと画面を閉じ、くるりとジュピアに向き直った。 「自分のレベルも確認した上で一つ気になったのだが、ジュピアのレベルは一体何なんだ?」  使える魔法の範囲から、彼女のレベルいうのは聞かずともわかるのだが、念のため確認したかった。
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