くすりはくすり

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 突如、ひょっとこが街中に現れた。  ひょっとこのお面をつけたその者は、法被(はっぴ)、股引(ももひき)姿でひょっとこ踊りをした。駅前や公園や商業施設の前などなど。人目に着く場所で躍り、警察官が来る前に消えるのだ。  いつしか、ひょっとこに会えればハッピーだなんて噂が広まった。見る人はみんな笑顔。  くすりと、お面の下でも笑った。その時。 「お面を取れ」  警察官が肩をつかんだ。  ひょっとこはどんな人物なのか。誰もが、警官も興味を持っていたのだ。その顔を見たくて、出会えた警官はにやにやするのを止められない。  観念してお面を取るひょっとこ。その顔は国民には見覚えがあるもので、群衆も警官も固まった。 「笑いは人の薬って言うでしょ? 笑う国民が増えれば、医療費が軽減されるかと思ってね。くすりと笑っていたら、実際、私の通風も良くなりましたよ。くすりはくすりってね」 (ニュース速報:ひょっとこは武藤厚労相)
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