「今めっちゃいい動画撮れたから送ったげるw」と言われて送られてきた動画に俺は空を飛ぶ

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『今めっちゃいい動画撮れたから送ったげるw』  ぴこんっ 「·······」  気持ちのいい春の昼下がり。彼女から送られてきたきた動画に、和み気分のよかった心は一気に崖下に落とされた。    どんなMプレイだろうか。俺にそんな趣味はないのに。  彼女から送られてきた動画には、素っ裸な俺の彼女と見知らぬ男が映っていた。  あれか? これはあれなのか? 寝取られ動画とかいうやつなのか??  そうか·····ついに俺も飽きられてしまったんだな·····  俺と彼女は今年で付き合って8年になるベテランカップルだ。  今までそんな雰囲気微塵も気付かなかったぜ・・・・・・なぜわざわざ報告動画を送ってきたんだろうか。俺の彼女、実は最低だった件?  大学を卒業し、某有名企業で運良く採用が決定。これからの順調な人生に思いを馳せていたところにこの浮気報告。  ーー本気で愛していたのに・・・・・・  ーー結婚できるだけ稼いだらプロポーズしようと思ってたのに・・・・・  ーー結婚後も苦労しないように大学受験むちゃくちゃ頑張って、やっと安定した高収入の会社に入社できたと思ったのに・・・・ーーー ・・・・・なんか、一気にどうでも良くなっちゃったな。よし!   窓から飛び降りよう!! そうだよ、そうすればいいんだ。せめて彼女には、飛び降り自殺して死んだ元彼としてでも覚えておいてほしい。長く付き合ったけどつまんない男として忘れ去られるよりは断然マシだ。  ノロノロとした動きでソファから離れ、そのままベランダに出る。 「俺はこれから天国へと羽ばたく!! I CAN FLY!!」 「きゃああああああ駿ッ!!!」  ゴンッ 「いっだああああッこれは足と腕両方逝ったかも・・・・・あーでもやっぱ死ななかったかぁ。まあ2階から落ちても怪我だけだもんな」」 「・・・・・・・・・・・何やってんの?」 「えっーーーーみ、実乃!? なんでここに・・・・」 「なんでってなんで? 何やってんの?ーーーなんで飛び降りなんてしたの!? 心臓止まるかと思ったじゃないっ!! いや一度止まってるわ!! 何してんのよこんのバカがッ!!」 「・・・・・何してんだと言いたいのはこっちだ! 実乃、お前こそ浮気してるだろ。さっきの動画はなんだよ、寝取られ動画なんか送ってきて・・・・」  落ちたと思ったらいきなり彼女の実乃がやってきて、いろいろ言われて、思わず俺も言い返してしまった。実乃は予想外だったが、自分で言っててまた悲しくなってきた。俺に飽きて浮気までしてるくせに今更なんだよ・・・・・・  だが返ってきたのは予想外の言葉だった。 「・・・・・は? 私が、浮気? 何それ、浮気なんてしてないわよ」  今度はこちらがは?となる番だった。だが実乃の目を見ても、嘘を言っている様子はなく、心からそう言っているように見える。 「は、だって、だったらさっき送ってきた動画はなんなんだよ? 実乃が他の男と寝てる動画、あれはなんなんだよ!」  あんなにそっくりな別人がいてたまるか! 他人の空似ってレベルじゃないぞあれは! 「え、あの動画? ああ! そういうこと。話が見えてきたわ。駿はあの動画の女が私だと勘違いして、浮気されたと思ったわけね」 「勘違い?」  勘違いじゃないだろ? 「そう勘違い! あれは私の双子、一卵性双生児の妹よ。家に男連れ込んで何やらお楽しみだったようだからこっそり盗撮してたのよ。うふふっあいつのあられもない姿が晒される時の酷く歪んだ顔が見れるのが楽しみだわ」  うふふって・・・・実乃・・・・・お前最低だな・・・・・その言い方だとア〇ルトサイトに動画UPするように聞こえるぞ・・・・  それよりも、勘違いだったんだな。勘違いだと言われて、俺はすごく安心した。 「でも! さすがに自殺はやりすぎよ! もうやめてこんなこと! 幸い一階だったから良かったものの」 「うん、ほんとごめんな。心配させた。でも今日採用面接合格したって通知が来て、そんな時にあんな動画見せられたら絶望もする。せっかく実乃と結婚しても心配なく過ごせるくらい給料の良い会社に就職が決まったってのに」 「えっ」  俺がそう言うと、実乃は驚いたような顔をした。 「何驚いてるんだ? それとも実乃は俺と結婚したくないのか?」 「・・・・・・・」  返事が怖いが、実乃の言葉を待つ。だが、いくら待っても返事がない。 「どうしたんだ実乃ッーーーってなんで泣いてるんだ!?」  返事がないので実乃の顔を覗くと、実乃がなんと泣いていた。思わずギョッとする。 「っそれは、プロポーズってことで合ってる・・・・・?」  だが、次の言葉で俺はハッとする。あれは、無意識だったが完全にプロポーズだよな!?  でも元々俺は実乃と結婚するって考えてたからちょうどいいかもしれない。 「うんそうだな。だけど今指輪まだ買ってないから正式なプロポーズは買ってからでいいか? ほんとにすまない」 「全然いいわよ。駿が私と結婚する気だって知れたから! それだけで十分嬉しい」  実乃が花が咲くように破顔する。 「っと、こんなとこでする話じゃないな。一旦家に入ろう。・・・・・そして俺は病院に行かなければ。腕と足がもう限界・・・・・」 「わっ! ごめんなさいっほんとに!! 怪我放置しちゃって! 早く病院に、あでも、これじゃ歩けないわよね、救急車呼ぶからちょっと待ってて!」 「ありがとな、助かる」  ーーーーそれから数分後、やってきた救急車に病院まで運ばれた俺は、救急隊員にも医者にも怪我の理由を聞かれたが、言ってもこちらが恥ずかしいだけなので、転んでやったということにした。  そして怪我が治った日、俺はプロポーズのための指輪を買い、夜、高級レストランでプロポーズをした。  そして実乃も、嬉しそうに、ちょっぴり泣きながら指輪を受け取ってくれた。 ーーーー俺たちの未来に幸せあれ!
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